疾患Q and Aでは、糖尿病、内分泌疾患などについて、よく聞かれることや知っておいていただきたいことをQ and A形式でまとめています。
Q: 橋本病(慢性甲状腺炎) と甲状腺機能低下症は同じ病気ですか?
A: 同じ病気ではありません。
解説:
甲状腺は首の前に存在する臓器で、代謝に関わるホルモンを作っています。患者さん自身の免疫反応が甲状腺に対して生じる(甲状腺に対する自己免疫)ことで、甲状腺に慢性的な炎症が起こった状態が 橋本病(別名:慢性甲状腺炎) です。
橋本病(慢性甲状腺炎) では「びまん性の甲状腺腫大」が共通の症状です。「びまん性」とは「全体」という意味で、「腫大」は腫れ上がることです。ようするに甲状腺全体が腫れて大きくなるのが特徴です。ただ、大きさは人それぞれで、かなり大きくなる人からそれほど目立たない人まで様々です。
しばしば、 橋本病(慢性甲状腺炎) と甲状腺機能低下症が同じものとして説明されていることがありますが、同じ病気ではありません。
「 橋本病(慢性甲状腺炎) 」は上に書いたとおり、自分自身の免疫反応が甲状腺に起こる病気です。一方「甲状腺機能低下症」は原因は何であれ、甲状腺が体に必要なだけの甲状腺ホルモンを作れなくなり、体内で甲状腺ホルモンが不足してしまう病気です。
もし「 橋本病(慢性甲状腺炎) 」があっても甲状腺が体に必要な分のホルモンを作ることができていれば「甲状腺機能低下症」にはなりません。 橋本病(慢性甲状腺炎) の方のうち甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満で、 橋本病(慢性甲状腺炎) の方の大部分では甲状腺のホルモン値は正常です。
ただ、「甲状腺機能低下症」の原因となる病気はその他にもあるものの、多くが 橋本病(慢性甲状腺炎) を基礎として起こっているため、「甲状腺機能低下症と 橋本病(慢性甲状腺炎) が同一のものである」と勘違いされることが多いのです。
( 参照Webサイト:日本内分泌学会Webサイト )